天に攫われた愛猫のことを、思い返さない日は無い。しかし、頻度と強さは減衰してきた、ように思う。
母は言う。「思い出してしまうとつらいから」と。
そうして意図的に思い返さないようにしていれば、いよいよ記憶が薄れてしまうのではないか。もう既に「忘れられない」のではなくなってしまったからこそ、思い返すしかない思い出になっているというのに。
シュークリームを見ると、愛猫との記憶が強く蘇る。
急病に苛まれ朦朧とした様子の愛猫を見て、ブドウ糖をあげようと、買ってきたシュークリームのクリームをほんのわずか少しだけ――
普段なら喜んで舐めるそれも、あの時のあの子には苦しいだけだった。苦しませてしまった。
あの子が亡くなった日の昼、私は母と開封済のシュークリームを食べた。
何を思いながら食べていたかは、思い出せない。